旅の午後も後半へ。ひとつひとつの訪問地が、ただの観光地ではなく…
過去の時間と対話する場所として立ち現れてくる──。
この時間帯に訪れたのは、静けさのなかに祈りと記憶が宿るようなふたつの場所でした。
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🕯 江洞窟と、生まれる大石の空気感
次に向かったのは「江洞窟」。 入口が東向きのため、日差しが入りにくい夕方はやや陰になっていたけれど、そのおかげで内部の神秘的な雰囲気がより際立って感じられました。

中に入ると、地下へと続く階段があり、ひんやりとした空気に包まれながら奥へ進みます。内部はかなり広く、“海の礼拝所”とも呼ばれる霊場としての風格を感じました。
ここ「江洞窟」は、小豆島霊場の中でも唯一、弁財天を本尊とする洞窟霊場とのこと。 岩肌がむき出しの空間の奥に仏殿が設けられ、そこに手を合わせさせていただきました。

参拝を終えて階段を登り奥の部屋へ行くと、そこには僧侶の方が。先ほど聞こえていたお経はスピーカーではなく、生の声だったのだとわかって驚きました。
奥の部屋では、岩肌の割れ目にお金を挟む人々の姿が印象的です。

私も挑戦してみたのですが、挟むのがなかなか難しい。けれど、こうした“行為そのもの”が儀式のように感じられ、たとえ落ちても、自分がその場を離れるまで落ちなければ、それでいいんだと──。
🏖 戸形小学校跡と、穏やかな夕陽の時間
江洞窟を後にし、車を走らせて向かったのは「戸形小学校跡」。 その手前には、美しく穏やかな砂浜が広がっていました。

皇子神社付近の海岸は波が荒かったのに対し、ここはまるで時間が止まったかのように静か。 夕焼けのなか、波の音と色彩に包まれながら、しばらくただ佇む──。
春にはこの海岸に鯉のぼりが掲げられるそうです。 もともとは戸形小学校の新入生を迎えるための風習だったとのこと。 閉校後も地域の方々によって受け継がれ、今もこの場所の“春の風物詩”となっているようです。
小学校は現在、公民館として使われているとのこと。

閉校は2005年。20年近くが経つというのに、校舎には当時の雰囲気が色濃く残されている。
かつては飼育小屋だったんだろうなと思える場所もあった。
映画のロケ地として使われることもあるというこの戸形小学校──
それは、保存というよりも、“生きたまま時間を内包する場所”のように感じました。
次回につづく──天空の巨石、重岩との対峙
次回は、いよいよ旅の終盤へ。
空に浮かぶようにそびえる小豆島の聖地──重岩(かさねいわ)へと向かいます。
その神秘的な佇まいと、石段の先で感じた“孤高と畏敬”の空気を、ありのまま記録します。
小豆島一周旅、二日目後半のメインシーンの幕がゆっくりと上がる──
