「AIで何かできないか」と言われた時、まず確認したいのは
“AIで何ができるか”よりも、その会社の地形がAIに合っているかです。
AIはロケットじゃなく、今いる土地を広げる道具。
飛び地へ飛ぶ夢を見た瞬間に、現場だけが重くなる——そんな話です。
TL;DR(要約) ✅
AIは“新しい島へ飛ぶロケット”ではなく、本業の土地を広げる補助パーツになりやすい。
大手はAIをメイン武器にせず、既存の仕組みを速く・安く・ブレなくする方向で使っている。
一方で中小の現場では「無料チャットAIで伝説の剣を作れ」みたいな期待が起きやすい。
結局、AI活用は本業と地続きで扱えるかから逃げられない。
Key Facts(本文から抜粋)
- ここで言うAIは「無料のChatGPTやCopilotの類」。
- この記事は「AIの使い方講座」ではなく、事業の地形図(地続きか、飛び地か)の話。
- AIは「メイン武器」よりも、強化パーツ(バッファー)として使われやすい。
- 大手は“3年スパン”で投資し、中小は“今すぐ無料で効くやつ”を求めがち。
- 無料チャットAIでどうにかできる範囲ではなく、実際はAPI等で組み込んでいる例が多い。
- 弊社は「お年寄り〜ファミリー層」「駆け込み寺」的な文脈で、AIを柱にしづらい。
Q&A(本文にある範囲で)
Q1. この記事はAIの使い方解説?
A. いいえ。「事業の地形図(地続きか、飛び地か)」の話です。
Q2. AIは会社の“メイン武器”になりうる?
A. 多くは補助・強化パーツになりやすく、メイン武器化は「与える側」に回った時になります。
Q3. 大手と中小でAIの時間軸が違うのはどこ?
A. 大手は“3年スパン”で投資し、中小は“今すぐ無料で効くやつ”を求めがち。
Q4. 弊社がAIセミナーに乗りづらい理由は?
A. 顧客層・商材・仕事の型が「待ちの仕事/駆け込み寺」寄りで、AIを柱にして次へ繋げるバックエンドが薄い、と本文で整理されています。
「AIでなんかできないか」の圧(中小企業の現場あるある)
「AIでなんかできないか。お前ら考えてこい」
※ここで言うAIは、無料のChatGPTやCopilotの類。
まるでAIを何でもできる魔法だと思ってる。しかも良くも悪くも、結果が出ない限り反論は基本スルー。
現実を説明しようとすると、だいたい次の呪文が飛んでくる。
「できない理由を考えるより、どうすればできるかを考えろ」
この言葉そのものは悪くない。
ただし、それは敵を知り己を知ってる智将が言う場合に限る。
敵も知らない、己も把握してない大将が言うと、鼓舞じゃなくて圧になる。
(現場側は、だいたいここで黙ってHPが削れる。)
これはAI講座じゃない。事業の地形図の話
この記事はAIの使い方講座じゃない。
事業の地形図(地続きか、飛び地か)の話。
AIはメイン武器なのか。
それとも強化パーツ(バッファー)なのか。
どこまでが「現実の地続き」で、どこからが「夢の翼」なのか。
この差を、地方の実感まじりで考える。
AIはロケットじゃない。地面を広げる道具だ
先にまとめだけ置く。
AIはロケットじゃない。地面を広げる道具だ。
それを忘れると、イカロスの翼みたいに飛ぼうとして落ちる。
(イカロスと違ってまず飛べないことが多いが)
OpenAIとGoogleの違い(親元ですらAI単体は厳しい)
まずAIの提供元を見て考える。
- OpenAI:AIがメイン事業に見える(=AIで食っていく圧が強い)
- Google:AIも重要視してる。でも稼ぎ柱は別にもある(広告とかクラウドとか)
前提として、いまのAIは開発コストが高すぎる。
でも一般ユーザーにとって「課金するインフラ」までにはなっていない。
いかに課金するユーザーを増やすかが課題の状態。
同じ生成AI競争でも「体力」の前提が違う。
Googleは帝国だから、仮に赤字でも他の事業にAI技術を活かせたら成功になりうる。
OpenAIはAIそのものが提供商品。AIの柱が倒れると会社そのものが倒れやすい。
この「AI開発を他でも活かす余地がある」というGoogleの立ち位置は、
AIをどう活かすかという会社にも、そのまま当てはまる。
大手ほどAIを“メインウェポン”だと思ってない
でも実際に成果を出してる側のAIは、だいたい地味。
「AIで全部自動化!仕事3分!」
「AIで売上爆増!」
「AIで新規事業ドーン!」
景気がいい。ワクワクするのもわかる。
でも、実際に活用されるAIの目的は、それ単体で儲けを出すというよりも——
- 既存の仕組みを速くする
- 労働コストを安くする
- ブレを減らす
つまり、補助または強化パーツ。
RPGで言うと「伝説の剣」じゃなくて「装備に付く+10%」とか「バフ(攻撃力アップ)」の類。
一方で、中小企業の社長さんはAIを魔法の道具だと思いがちで、
AIという道具で伝説の剣を作れ、と言ってくる。
しかも道具がAPIでも有料AIでもなく、無料で使えるチャットAI。
無料ガチャで神装備出せ、みたいな圧。……ズレる。
大手は“3年スパン”。中小は“インスタント感覚”。ここで事故る
大手:とりあえず3年投資して見てみるか(本腰入れる)
中小:今すぐ無料で効くやつない?(奇跡待ち)
大手ほど手間暇かかる料理を作ろうとしてるのに、
現実を知らない中小ほど「AIで安くて美味いインスタント料理作って商売できない?」って考える。
特にPC小売のローカル店ほど、ITやAIが近いように感じる。
だから「ウチでAI売り込める新事業できない?」になりやすい。
じゃあ実際、企業はAIをどう活かしてるのか。
ここから具体例。全部「地形」の話。
事例:AIの使い方は派手じゃない(役割が違うだけ)
じゃあ実際、企業はAIをどう活かしてるのか。
ここから具体例。全部「地形」の話。
パソコン工房:地続きAIの「商品のアピールポイントにする」
パソコン工房はAI向けPCの案内ができる。
この場合のAIとはオンラインサービスのAIではなく、ローカル環境でも動かせるAIだったりする。だからPCパワーがいる。
BTOや構成提案の文化があるから、GPUの話をしても不自然じゃない。
重要なのは「AIで稼ぐぞ」と旗を立ててるというより、
- AIという用途でPCを売る
という形を作ってる点。
AIが主役じゃない。PC販売の説明の中にAIが混ざる。
ドスパラ:同じ土俵+「運用」まで厚くできる側
ドスパラもAI向けPCを語れるBTOの土俵がある。
さらにサイト運営や導線改善で、AIチャットボットみたいな施策も足せる。
これも「AI単体で稼ぐ」じゃなく、
本業(販売・顧客対応)を補強するAIという置き方。
サードウェーブ:AIを“与える側”に回ると空気が変わる
ドスパラ運営のサードウェーブは「3年で50億投資」「優秀人材を70人直接雇用」みたいな話を公表している。
これは「ドスパラ店頭でAI売るぞ」というより、
AIそのものを提供する側になろうとする動きに見える。
- AIを使う側:AIは補助・強化パーツ/バッファー
- AIを与える側:AIが商品・基盤・メインウェポン
AIが“メインウェポン”になりうるのは「与える側」になった瞬間。
無料AIで「武器作れんか?」って言い出す中小とは、次元が違う。
ヤマダデンキ:AIを“本業の裏方”として混ぜる教科書ムーブ
ヤマダのAI活用って、「AI売ります!」というより「既存の売り方を強化します」に寄って見える。
たとえばオウンドメディア運用でAI記事代行を使って、記事制作の速度や量を上げる。狙いはたぶんこう。
- 制作リソースの圧縮
- 更新頻度の底上げ
- SEOの回転数アップ
さらに、GoogleのP-MAXでAIが広告配信を最適化する仕組みを使って、セルフ式マーケ(内製寄り)に寄せる流れもある。
ここでも目的は、AIを提供して稼ぐことじゃない。
AIを活用し、本業に活かす。ずっと地続きのまま。
株式会社カンマン:地方でも再現しやすい「地続きモデル」
同じ県内で、本業と地続きでAIを回してる代表例として株式会社カンマンがいる。
メイン事業のシステム開発・HP制作・保守運用って、AIが効く場所が多い。
- 文章(お知らせ、ブログ、FAQ、LPのたたき台)
- 構成案(ページ設計、導線整理、見出し構造)
- 提案書(たたき台、要件の言語化)
- 運用(更新のスピードアップ、作業の標準化)
ここで強いのは、AI研修を「単発の柱」にしてない点。
既存顧客の範囲で、まず実績を積める。
- システム開発やHP制作した顧客向けにAI研修をやる(無料でもOK)
→ AI研修の実績が増える
→ 商工会などから「AIセミナー開催してください」が入りやすくなる
→ セミナー依頼主からお金が入る
こういう「AIで稼ぐ王道」、教える構造が作れる。
しかもセミナーは玄関(入口)で、本業へ案内できる。
受講したお偉いさんが実例を見て、
「うちもその仕組み欲しい」「相談していい?」「導入お願いしたい」
となった瞬間、どこに相談するか。
当然、研修を開催したところになる。
弊社の属性:求められていることが違う
うちはどちらかというと、家電量販店のPC売り場が独立してメンテまで回してる感じ。
日々の業務をAIで短縮したいというより、うちは「困った時の駆け込み寺」ポジション。
ここから自分の話。結局ここが本題。
- 取り扱い商材:メーカーのスタンダードモデル中心(普段使いPC)
- 構成:GPUなし/カスタム幅も薄め(AI向けPCが棚にない)
- 顧客:お年寄り〜ファミリー層が多い(ネット・メール・年賀状)
- 求められる価値:最先端より「買ってすぐ使える安心」「困った時に持ち込める」
この属性があるから、AIの話はまずこうなる。
弊社の文脈に乗るか?
待ちの仕事で、来店が発生したら対応する。
そもそも書類作成で困ってる業務でもない。
このモデルで「AIを柱にしよう」は、地形的に無理が出る。
「AIでなんかできないか」は、だいたい「無料ChatGPTで金儲けできんか?」だ
もし中小の社長から「AIで何かできない?」と言われたら、
これは「AIで業務改善したい」じゃない。
だいたい「AIで金儲けできんか?」の意味だ。
少なくとも弊社の社長は、そっち。
社長のプランとしてはAIセミナーが思い浮かんでいるようだ。
見積書、請求書そうしたことがAIで作れますよ!みたいな、
一見価値がありそうなことを教えたいらしい。
でも実際には、そうした作業はAIに任せるより、
弥生なり、かるがるシリーズなり、専用ソフトを使った方が安定するし、
AIで作成するよりも情報漏洩の心配も少なくなる。
むしろ弥生みたいなソフト会社がAIを組み込んで「補助」として活用できる未来の方が現実的。
そもそも社内でAIを活用していない会社がAIのセミナーを行っても、
内容は検索して出てくる薄味のものにしかならない。
AIとは!プロンプトとは!みたいな形は一応作れるだろうが、
受講者がそれで現場でどう活かそうかってなっても困るはずだ。
開催してもリピートされるセミナーになる確率は高くないだろう。
AI活用は「本業と地続きで扱えるか」から逃げられない
まとめ:AIを活かすには「本業と地続きで扱えるか」から逃げられない
AIは新しい土地へ行く夢のロケットにならない。なりにくい。
別の場所に飛ぶんじゃなく、今いる土地を広げていく補助パーツ。
改めて並べると、こういう地形だった。
- パソコン工房:AI用途でPCを語れる土壌がある(AIは商品のアピールポイントに過ぎない)
- ドスパラ:同上+サイト運用強化まで足せる(商品アピール他、サイトのサポート強化でAI活用)
- ヤマダデンキ:集客・運用の強化パーツとしてAIを混ぜる(こちらも本業に響くようにAIを扱う)
- カンマン:本業(HP/システム)の延長でAI研修を玄関にできる(地続きの素直なモデル)
- サードウェーブ:AIを提供する側として投資し、新しい島を作ろうとしてる(別格の土俵)
どこも無料のチャットAIでどうにかできる範囲じゃない。
API等を活用して独自に組み込んでる。
中小の社長さんが「会社のためにAIで何かできないか」と思うのは健全だと思う。
ただ、まず周りを見回して「AI単発で柱にしてる所があるか?」を確認した方がいい。
どこも本業をAIで補佐・強化できる余地があるから導入してる。
同じローカル中小でも、カンマンは本業の地続きでAIの実績を積んでる。
実績があるからこそ、濃いセミナーができる。
セミナー単体の収益がフロントエンドになり、本業に案内できる構造。
そうなると商材、顧客の属性から考えても、
弊社は仮に内容の薄いAIセミナーを開催しても、
バックエンドがないので次に繋がる構造ではない。
改めて、AIを活かせる土壌が薄いなと思うのであった。
