恵門不動の駐車場に戻るころ、時刻はすでに13時を過ぎていた。
次に目指すのは、小豆島の東部にある「吉田ダム」。
本当なら、この時間には寒霞渓のレストハウスに立ち寄り、
名物の小豆島バーガーを昼食に──という計画だったのだけれど…
思った以上に道中を堪能して時間がかかってしまった。
バーガーの営業時間15時までには到底間に合わなさそうだった。
今回、小豆島を一周する旅のなかで唯一訪れていないのが、寒霞渓。
ここは、次回の再訪の楽しみに取っておこうと思う。
予定通りにいかない旅こそ、記憶に残るもの。
その瞬間の流れに身を任せ、吉田ダムへとハンドルを切った。
↓前回の記事はこちら

島の“もうひとつの顔”──石の島を走る
北東部を走っていると、小豆島が「石の島」と呼ばれる理由が肌でわかってくる。
山肌が無造作に削り取られ、むき出しになった山の姿。
点在する石切場が、自然と産業の交錯を物語る。
観光スポットとして名の知れたエンジェルロードやオリーブ公園、寒霞渓だけでは
このエリアには観光客が通ることはないかもしれない。
こうした光景を味わうためにも、夜ではなく明るい時間帯に走るのが一番。
日が暮れてからはオリーブ公園に戻っていたのも、このためです。

運転中だったので切り崩された山たちの写真はありません。
今思うと、駐車して撮っても良かったかなって。
変わりに北東部の展望台からの写真を載せておきます。
吉田ダムと球体オブジェ&ダムカード
道を間違えて、ダムの下の駐車場に行ってしまったり
道中にあった神社に寄ったりしていたが、ようやく辿り着いた吉田ダム。
駐車場に車を停めると、まず目に入ったのは 水をまといながら静かに回転する球体のオブジェ。
なぜ置かれているかはわからないが、これがあると駐車場にも遊び心を感じる。

駐車場近くの建物の中には入れなかったが
建物の入り口脇に置かれていたのはダムカードの配布机。
名前の記入は不要で、都道府県だけを記入する簡易な用紙が置かれている。
カードが必要な人が自由に持ち帰るスタイルのようだ。
自分は収集家ではないので受け取らなかった。
ただ記帳を見ると、東京から来た方が数日前に立ち寄っている。
全体としては、ここ一週間で5組ほどの訪問記録。
観光ツアーに組み込まれる場所ではない分、
一人旅やマイペースな観光客の静かな足音が残っていた。
展望台から見えた“もう一つの海”
吉田ダムで最も印象的だったのは、 球体のオブジェでも、カードでもない。
ダム奥の橋を渡った先に佇む、巨大な像。

その像は、果たしてこれも小豆島アートの1つなのだろうか。
正体は分からないまま、その奥に続く階段へと足を進めた。
GoogleMapによれば、展望台があるらしい。
せっかく来たのだから登ってみようと思ったのだ。
そして辿り着いた展望台からの眺め──
山の岩肌がすぐ近くに迫り、東側には海が見えた。
「海が見えるダム」というのは、なかなかに珍しいらしい。

周囲には誰もおらず、30分ほどは吉田ダムでぼんやりしていたと思う。
音もなく、ただ風だけが動いていた。
福田海岸──もう一つのエンジェルロード
吉田ダムを後にし、小豆島の東側をさらに南下。
途中、「さぬき百景」の一つにも選ばれている福田海岸に立ち寄る。

エンジェルロードや希望の道のように天然ではないけれど、 ここにも小島へと続く一本道がある。
誰もいない浜辺と、静かに伸びる砂の道。
今回の旅で出会った“もう一つのエンジェルロード”とも言える景色だった。
エンジェルロードも希望の道も今回は時間が合わずに道がなかったから。
ひっそりと、しかし確かに心に残る場所。
そうして旅は、小豆島一周を終えた先の静けさへと続いていく──
⛰️ 次回へつづく
しし垣、生まれるコアストーン、家紋入りの石たち──
ただの岩場と思っていた場所が、解説ひとつで“時間の蓄積”として立ち上がってくる。
思っていた以上に濃密だった天狗丁場の散策。
まだまだ旅の記録に突如刻まれる“静かな記憶”が待っています。
